「早く結婚しなさい」「いい人いないの?」。帰省のたび、電話のたびに繰り返される親の言葉が、静かに心を削っていく。親を嫌いになりたいわけではないのに、その一言で婚活そのものが苦しくなってしまう——そんなご相談を、本当に数多くお受けしてきました。実は、調査データを見ると、「結婚するもしないも子どもの自由」と考えている親は、父親で約1割、母親で15.8%しかいません。つまり、親からの期待を感じているのは、あなただけではないのです。この記事では、親の期待の実態をデータで確認したうえで、その言葉とどう距離を取り、誰のために婚活するのかを立て直す方法をお伝えします。
親の言葉がつらいのは、あなたが弱いからではありません
最初にお伝えしたいのは、親からの「早く結婚しなさい」に傷つくのは、心が弱いからでも、親不孝だからでもない、ということです。
親の言葉は、他人の言葉とは重さが違います。育ててもらった相手だからこそ、無下にできない。期待に応えたい気持ちと、自分のペースで進みたい気持ちが、心の中でぶつかります。この板挟みは、真面目に親と向き合ってきた人ほど強くなります。
まず、その「親の期待」が実際どれくらい一般的なものなのかを、データで見てみましょう。
データで見る、親が子どもの結婚に寄せる期待
明治安田生活福祉研究所が2016年に実施した「親子の関係についての意識と実態に関する調査」は、全国の親約1万人・子ども約6千人にたずねた大規模調査です。少し前の調査ですが、親世代の意識を正面から数字にした貴重なデータです。

「結婚は子どもの自由」と考える親は、1〜2割にとどまる
「結婚するもしないも子どもの自由」と考えている親は、父親で約1割(息子について9.9%、娘について11.6%)、母親で15.8%でした。裏を返せば、8割以上の親は、子どもの結婚に何らかの希望や期待を持っているということです。
さらに、子どもの婚活に「関与したい」という意向のある親は47.7%。娘を持つ母親に限ると56.1%にのぼります。あなたが感じているプレッシャーは、特別な家庭の話ではなく、ごく標準的な親子関係の中で起きていることなのです。
親が望む結婚年齢と、子どもの希望はズレている
同じ調査では、親が子どもに望む結婚年齢もたずねています。母親が娘に望む結婚年齢は「20代後半まで」が44.9%で最多。一方、娘自身が望む結婚年齢も「20代後半まで」が58.1%で最多です。
興味深いのは、望んでいる方向はほぼ同じだということです。親子で希望が真っ向から対立しているわけではない。それなのに苦しくなるのは、時期の希望が違うからではなく、「決める主体」が入れ替わってしまうからです。ここが、この問題の核心です。
親の言葉の正体は、多くの場合「愛情と不安」です
12年間で1万人以上のご相談をお受けしてきて、親の「早く結婚しなさい」の背景にあるものは、ほとんどの場合シンプルだと感じています。それは、愛情と、愛情ゆえの不安です。
親の世代にとって、結婚は人生の安定そのものでした。先ほどの調査でも、親世代が実家を出た理由は「結婚」が大多数です(親世代の57.1%が「結婚するまで」実家にいたと回答しています)。親は自分が生きてきた地図で、あなたの幸せを測ろうとしている。悪意ではなく、持っている地図が違うのです。
だから、親の言葉を「攻撃」として受け取って戦う必要はありません。ただし——ここからが大事なのですが——愛情から出た言葉であることと、その言葉に従うことは、まったく別の話です。
「お母さんなりに心配してくれているんだ」と理解することと、「だから言うとおりにしなければ」と考えることのあいだには、はっきりとした境界線があります。この境界線を曖昧にしたまま婚活を続けると、お相手を選ぶ場面でも「親が気に入るかどうか」が基準に混ざり込み、自分の気持ちがわからなくなっていきます。
あなたの人生のトップは、あなたです
私がご相談のなかで、繰り返しお伝えしていることがあります。自分の人生のトップを、親に明け渡さないでください、ということです。
以前、こんな方がいらっしゃいました。ずっと憧れていた指輪を、パートナーに買ってもらえることになった。ところがお母様に「そんな高いのつけてどうするの」と反対され、迷い始めてしまったのです。私はその方に、こうたずねました。「その指輪をつけるのは、誰ですか?」
結婚も同じです。お母様のために結婚するわけではありません。その結婚生活を毎日生きるのは、あなたです。誰かの意見を参考にすることはあっても、最終的な決定権は自分が持つ。ここを明け渡してしまうと、自分の人生を生きている感覚が薄れ、何のための婚活かわからなくなっていきます。

私自身、母との関係にはずいぶん向き合ってきました。私の母は、何でもまず否定から入る癖のある人でした。「そんなの本当に必要なの?」「それってダメじゃないの?」。その影響が恋愛のこじらせにつながっていたと、後から気づきました。向き合ったあとは、母との関係そのものも、自分が心地よいバランスで、自分の意思で関わり方を決められるようになりました。親との距離は、我慢するものではなく、自分で設計してよいものです。
親のプレッシャーに飲まれないための、3つの線引き

1. 意見は聞く。決定権は渡さない
親の言葉を遮断する必要はありません。「そういう心配をしてくれているんだね」と受け取ったうえで、決めるのは自分——この二段構えができると、会話のたびに消耗しなくなります。反発も服従もしない、第三の位置です。
2. 焦りの中身を、「親のため」と「自分の願い」に分ける
親に何か言われた後の焦りには、2種類が混ざっています。「親を安心させなきゃ」という焦りと、「私自身が結婚したい」という願いです。紙に書き出して分けてみてください。自分が本当に結婚したいのかわからなくなっているなら、それは親の声が自分の声より大きくなっているサインです。
3. 距離の取り方も、自分で決めていい
言葉の線引きで足りない場合は、物理的な距離も選択肢です。帰省の頻度を自分で決める、結婚の話題になったら切り上げる、実家を出る。親の価値観の影響が強すぎるときは、離れることでその影響を弱められます。距離を取ることは、親を嫌うことではありません。
よくある質問
Q1. 親に「早く結婚しなさい」と言われ続けて、つらいです。
まず、その状況が標準的であることを知ってください。「結婚するもしないも子どもの自由」と考える親は父親で約1割、母親で15.8%しかいません。8割以上の親は何らかの期待を持っています。そのうえで、意見は聞いても決定権は渡さない、という線引きを持つことをおすすめします。
Q2. 親を安心させるために結婚するのは、間違いですか?
動機の一部に「親を安心させたい」があること自体は自然です。ただ、それが主目的になると、結婚生活を毎日生きるのは自分だという事実とのあいだで、いずれ苦しくなります。焦りを紙に書き出し、「親のため」と「自分の願い」を分けてみてください。
Q3. 帰省のたびに結婚の話になり、憂鬱です。
帰省の頻度や滞在時間を自分で決めてよい、というところから始めてください。「帰らないと親不孝」という義務感で帰り続けると、婚活そのものへの気持ちも重くなります。結婚の話題になったら別の話に切り替える、と事前に決めておくだけでも負担は減ります。
Q4. 親が婚活に口を出してきます。相手の条件まで指定されます。
調査では、子どもの婚活に関与したい親は47.7%、娘を持つ母親では56.1%にのぼります。珍しいことではありません。ただし、相手選びの基準まで親に合わせる必要はありません。書き出した条件のうち「どれが親の言葉で、どれが自分の望みか」を分けることから始めてください。
Q5. 親の期待に応えられない自分を、責めてしまいます。
親の期待は、親が生きてきた時代の地図から出てくるものです。地図が違うのですから、そのとおりに歩けないのは当然のことです。あなたの人生のトップはあなたです。期待に応えることではなく、自分の願いに正直であることを基準にしてください。
まとめ:親の愛情は受け取り、人生の決定権は自分に
親からの結婚のプレッシャーは、8割以上の親が期待を持っているという意味で、誰にでも起きることです。その言葉の多くは愛情と不安から出ています。だから戦う必要はありません。ただ、従う必要もありません。
意見は聞く、決定権は渡さない。焦りの中身を分ける。距離は自分で設計する。この3つの線引きができると、親の言葉に消耗せずに、自分のための婚活に戻れます。
あなたのたった一度の人生は、あなたのためのものです。親の声ではなく、自分の心の声で決めていきましょう。
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